Cubaseには「トラックを無効化する」という便利な機能があり、任意のインストゥルメントトラックやMIDIトラック、オーディオトラックなどを無効化して、メモリーを開放したりCPU負荷を下げることが出来ます。
この機能を使うことで、メモリーやCPU負荷を気にすることなく大規模なテンプレートを運用することが可能になります。
具体的には、あらかじめ様々なプラグイン音源を立ち上げて無効化しておいたテンプレートを作成し、必要に応じて任意の音源を有効化させるわけです。
こうすることで、プロジェクト立ち上げ時に膨大なサンプルを読み込む必要が無くなり、セットアップが整った音源を、必要なタイミングで簡単に呼び出すことが可能になります。
「トラックの無効化」の機能にはバグがあった
しかし「トラックの無効化」にはバグが存在しており、無効化したマルチティンバー設定のMIDIトラックが正常に復元(有効化)できない問題が多々発生していました。
例えば、Kontaktを立ち上げ、MIDIチャンネルを割り当てた複数のパッチを用意し、各パッチそれぞれにMIDIトラックを用意したとします(いわゆるマルチティンバー設定がなされた状態)。
これらのトラック(MIDIトラックとKontaktが立ち上がったインストゥルメントトラック)を無効化して再度有効化すると、KontaktとMIDIトラックとの接続が解除されてしまうのです。
そのため、「トラックの無効化」の機能を使ってテンプレートを作成していたユーザー達の多くは、MIDIトラックを一切用いずに、インストゥルメントトラックだけを使っていました(すべての音源をシングルティンバーとして扱っていた)。
こうした様子は、海外のCubaseユーザー達によるテンプレート解説動画で見ることが出来ます。
Cubase 13で「トラックの無効化」のバグが解消された模様
2023年12月に公開されたCubase 13では、このバグが解消された模様です。
手元の環境で試した範囲では、インストゥルメントトラックとMIDIトラックの接続が切れてしまうことはなく、設定通りに復元されるのを確認しました。
Steinbergの公式掲示板でも「トラックの無効化機能が正常に動作するようになった」という報告が見られました。
ちなみに、Cubase 13での「トラックの無効化」機能のメニュー上の表記は、「選択したトラックをオフ(オン)」になっています。
余談~マルチティンバーとシングルティンバーのCPU負荷の違い
これは制作環境によって異なると思われるのですが、私の環境の場合だと、KontaktやOpusといった音源を使う際にはマルチティンバー設定で使用することによってCPU負荷を低く抑えられることを確認しています(Windows 10、i5-8400、48GBのメモリー、ストレージは全てSSD)。
このことから、以前までは「トラックの無効化」を使ったテンプレート(シングルティンバーだけのテンプレート)の作成は気が進まなかったのですが、このバグの解消を機に移行を検討しています。
というのも、これまで使用してきたVEP(Vienna Ensemble Pro)の操作感が今一つ馴染まない状態が続いていたからです。
確かにVEPは、CPU負荷の限界拡張や複数のプロジェクトの切り替えの点では優れているのですが、オーディオインターフェースとVEP独自のバッファによる大きなレイテンシーを常に背負って作業しなければならない点が不満でした。
作業時のレイテンシーの面では、CubaseのASIOガード(およびリアルタイムパスとの切り替え)が優れていると感じられます。
この辺りのお話は、また別の記事で書こうと思います。